Key word 精神病性昏迷 うつ病性昏迷 緊張病(カタトニア) 30歳代男性 20歳時、大学病院口腔外科に入院した。治療過程で不穏となり大量のハロペリドールを静注され、悪性症候群を発症した。1カ月後軽快退院。退院後は自宅で過ごしていたが、数日後、「警察が来る」「声が聞こえてくる」など幻聴らしき訴えもあり当院初診。前日までは話していたが、本日急に話さなくなったとの事であった。初診時はデパスなど抗不安薬が処方された。3日後、著者診察。緘黙・拒絶的であり、リスペリドン1mgを処方した。初診から9日目、依然緘黙状態ではあるが、家族から見て「表情が出て来た」とのことで以後受診は途切れた。 今回、1ヶ月前より体調不良で仕事を長期欠勤した。徐々に食事摂取量が少なくなり、2日前「動けなくなっているところ」を家族に発見され、総合病院に緊急搬送された。脱水による腎不全と診断され、点滴により腎不全は改善した。 経過 開眼し、ギョロギョロ周囲を見回す。 体温36.8℃、血圧117/83、脈拍95/分 重症昏迷であるが、うつ病性昏迷及び精神病性昏迷との鑑別困難であった。 入院3日目 入院4日目 入院5日目 入院6日目 入院7日目 入院9日目 セルシン筋注 中止。アナフラニール点滴25mgに減量。 朝食時 口を開けないなど拒絶があるため以下追加処方した。 食事:ペースト食→粗キザミ食ハーフに変更。 入院10日目 入院13日目 入院15日目 入院17日目 入院19日目 入院21日目 入院22日目 入院23日目 入院28日目 入院36日目 処方 同日看護師同伴で自宅に独歩で帰宅。 入院37日目 処方 しかし、当夜は眠れそうだからと、追加薬の服用は拒否した。 入院40日目 入院41日目 入院42日目 以後精神状態は安定した。 後日、生活状況を聞き取ると、6年前から一人暮らしを始めたが、給料はタバコや遊興費に使い生活費が不足したり、公共料金の支払いが滞ることもあった。 このため退院後の生活を想定したソーシャルスキルの習得やリハビリ活動を行なった。 入院76日目 診療のポイント 雑誌文献を検索します。書籍を検索する際には「書籍検索」を選択してください。 Japanese English
I.はじめに 昏迷はJaspers11)によれば,「意識は覚醒していて,運動制止の状態で一言も発せず,心的現象の了解可能な徴候を示すことなく,自己との関係を持とうとするすべての試みに向かって無反応にとどまっている状態」である。このように昏迷は一つの外に表われた状態像として定義される。もちろん,その時の内的体験は抑制,制止,阻害,困惑,幻覚妄想などいろいろである。疾病学的にみても,この状態は精神分裂病だけではなく,うつ病,心因反応,ヒステリー,てんかん,器質性精神障害などにもよくみられ,心的機能の解体がある水準にまで達すると生じてくる非特異的な生体の反応と考えることができる。一口に昏迷といっても,筋緊張の面からいえば弛緩性昏迷と緊張性昏迷,その程度からいえば完全な昏迷から亜昏迷,精神病理学的には幻覚妄想が豊富な例から体験の乏しい例まで,種々の段階が考えられる。精神分裂病圏内では,昏迷は運動性亢奮とともに緊張病症状群の中に入れられ,定型的分裂病よりもむしろ非定型群によくみられる症状である。緊張病症状の場合,多動,無動などの運動性の症状,自律神経症状およびその身体随伴症状,経過の挿間性または周期性などの特徴から,その基盤に生物学的な機能変化が予想されるのであって,Gjessing, R. 7)の周期性緊張病に関する研究をはじめとする多くの生物学的研究はこれを裏づけるものである。その中には脳波学的研究も含まれるのであって,われわれも最近,緊張病性昏迷をきたした10症例について,その脳波像の変化を詳細に検討し,新しい知見を得たので報告する。 Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved. 基本情報
電子版ISSN 1882-126X 印刷版ISSN 0488-1281 医学書院 文献を共有 |