一級 建築士で なければ 行っ ては ならない 建築物の設計 及び工事監理を 二級建築士が 行い 工事が 施工 され た場合 当該建築

合格への鍵 ~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~

(本欄は、当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者(元国土交通省室長)が総合監修します。)

平成 4年 第 4 回

―建築士事務所に関する重要な規定は何か?―

第3回で、個人としての建築士が誠実に仕事をすることと、その建築士の属する建築士事務所がしっかりしていることによって社会の負託に答えることが建築士法の基本理念となっていると記しましたが、建築士法に関する試験問題でも

個人としての建築士の在り方についての問題

建築士事務所の在り方についての問題

とに大別されます。
今回は建築士法における建築士事務所についての規定について、本試験問題を基に考えてみることとします

【問題1】次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。
  1. 管理建築士は、その建築士事務所の業務に係る技術的事項を総括する専任の建築士であるが、当該建築士事務所に属する他の建築士が設計を行った建築物の設計図書について、管理建築士である旨の表示をして記名及び押印をする必要はない。
  2. 建築士事務所の開設者が建築主との設計受託契約の締結に先立って管理建築士等に重要事項の説明を行わせる際に、管理建築士等は、当該建築主に対し、建築士免許証又は建築士免許証明書を提示しなければならない。
  3. 建築士事務所の開設者は、建築主から受託した設計の業務の一部を他の建築士事務所に再委託する場合にあっては、当該設計受託契約を締結したときに当該建築主に交付する書面等において、当該再委託に係る設計の概要、再委託の受託者の氏名又は名称等を記載しなければならない。
  4. 建築士事務所の開設者は、設計又は工事監理以外の業務について、建築主から受託する場合にあっては、建築士法に基づく重要事項の説明や契約を締結したときの書面の交付を行わなければならない。

この問題は、平成26年一級建築士法規の建築士事務所に関するいくつかの重要事項を含む問題です。
設問1は、建築士事務所を技術的な面から統括し、管理し、必要に応じて(事務所の開設者と管理建築士とが異なる場合には)事務所の開設者に、建築士や技術者の配置等、事務所の様々な技術的な事項について意見具申しなければならない重要な立場にある管理建築士に係わる設問ですが、設計図書に記名押印するのは、設計を行った建築士の職責の範囲内のことで、事務所の技術的な面について管理をする管理建築士とは直接関係ありませんので設問の通りです。

設問2、3も設問の通りです。設問2において、建築士事務所の開設者は建築主との設計受託契約に先立って重要事項の説明をしなければなりませんが、重要事項の説明は管理建築士でなくても他の代理の建築士でも差し支えありません。但し、代理の建築士の説明内容についての責任は管理建築士が負わなければならないことになっている点にも注意する必要があります。

設問4において、重要事項の説明や契約を締結するときの書面の交付は、設計又は工事監理の業務の場合のみですので設問4は誤りで、他の業務の場合は必要ないことにも注意しておく必要があります。

以上のことからも、建築士事務所において、建築士の行う業務のうちで設計と工事監理は特に重要度の高い業務に位置づけられていると考えることができます。

【問題2】建築士事務所に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。
  1. 建築士は、他人の求めに応じ報酬を得て、建築工事の指導監督のみを業として行おうとするときであっても、建築士事務所を定めて、その建築士事務所について、都道府県知事(都道府県知事が指定事務所登録機関を指定したときは、原則として、当該指定事務所登録機関)の登録を受けなければならない。
  2. 建築士事務所の開設者は、建築物の建築に関する法令又は条例の規定に基づく手続の代理の業務について、建築主と契約の締結をしようとするときは、あらかじめ、当該建築主に対し、重要事項の説明を行わなければならない。
  3. 建築士事務所の開設者は、委託者の許諾を得た場合においても、委託を受けた設計又は工事監理(いずれも延べ面積が300m2を超える建築物の新築工事に係るものに限る。)の業務を、それぞれ一括して他の建築士事務所の開設者に委託してはならない。
  4. 建築士事務所の開設者と管理建築士とが異なる場合においては、その開設者は、管理建築士から建築士事務所の業務に係る所定の技術的事項に関し、その業務が円滑かつ適切に行われるよう必要な意見が述べられた場合には、その意見を尊重しなければならない。
  5. 建築士事務所の開設者は、設計等の業務に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保するための保険契約の締結その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

問題2は、平成29年度二級建築士法規の問題ですが、この問題には一級・二級建築士の建築士法の問題として最も程度の高いレベルの設問と近年の法改正に係わる留意すべき設問とを含んでいます。

設問1は、建築士の行うことのできる業務のうちで、建築士法第21条において、建築士が行うことのできる業務は、「設計及び工事監理のほか、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査又は鑑定及び建築物の建築に関する法令又は条例の規定に基づく手続の代理」と「その他の業務」と規定されており、また、建築士法第23条では、他人の求めに応じて報酬を得て第21条で規定されている建築士の行うことのできる業務の中で「その他の業務」を除く業務を業として行うときは、建築士事務所の登録をしなければならないと規定されています。
すなわち、法21条に規定されている業務の内で、施工管理業務等に該当すると考えられる「その他の業務」についてだけは建築士事務所登録の義務から除外されている訳です。
前回でも述べましたように建築士法上、工事監理と施工管理とは明確に区分されており、設計・工事監理等の業務を行う場合は建築士事務所登録を行う必要がある一方で、「その他の業務」にあたる施工管理を行う場合は建築士事務所登録の必要がないことが建築士法上の重要な基本原則となっている訳です。
ところで、設問の建築工事の指導監督は、建築士法上、建築士事務所登録が必要な業務である訳ですが、具体的にはどのような内容の業務を指すのでしょうか。
建築工事の指導監督は、建築士法21条、23条からは、当然、工事監理や施工管理とは別の業務で、また、建築事務所登録が必要であることから、例えば、委託者側の立場で、セカンドオピニオン的に施工管理を確認するなどの業務であると解することができます。(実際には、特殊な工事等で通常の契約形態とは別にCM(コンストラクション・マネジメント)契約をする場合等にあたります。)

一級 建築士で なければ 行っ ては ならない 建築物の設計 及び工事監理を 二級建築士が 行い 工事が 施工 され た場合 当該建築
一級 建築士で なければ 行っ ては ならない 建築物の設計 及び工事監理を 二級建築士が 行い 工事が 施工 され た場合 当該建築

以上のように、この設問の内容は、単に建築士法上に記載されている事項に合っているか、否かということだけではなく、設計・工事監理や施工管理等の建築の全体構成の基本原則に係わる重要な内容の問題であると考えることができます。
また、設問2における重要事項の説明は、問題1の設問4と同一の内容で、設計・工事監理の場合に限られるため、設問2は誤りです。
設問3、設問4、設問5は正ですが、いずれも平成27年の法改正に係わる設問で、過去に出題されたことのない新規な内容のものです。
なお、設問5における「……の措置を講ずるよう努めなければならない。」は、「……しなければならない。」のような義務規定と異なる努力義務規定であることも留意しておく必要があります。
以上の問題1、問題2の内容からも、建築士法に係わる問題は、一級、二級の問題で内容・レベルの差はなく、建築全体を考える上で大切な内容を含むものが多い一方で、複雑な例外事項等を含む条文は少なく、比較的勉強し易いものであるともいえましょう。



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​第67回

建築士試験に独学で挑戦する方のために、過去問を使って問題の解き方・ポイント・解説などを行っています。去問約20年分を1肢ごとにばらして、出題の項目ごとに分けてまとめています。1,2級両方載せていますので、1級受験の方は2級問題で慣らしてから1級問題に挑戦。2級受験の方は、時々1級の過去問題からも出題されますので参考程度に1級問題を見ておくと得点UPが狙えます!!全科目終わるには先の長い話ですが、勉強の参考になると嬉しいです!


独学で勉強すると、一番時間がかかると思われる法規から始めます。(問題や解説の中で、時々誤字脱字があります。気を付けてはいますが、ごめんなさい!気が付いたら優しく教えて頂けると嬉しいです。また、解説等で解り辛いところは質問頂ければできる範囲で解説いたします。)法規 19.その他法令

建築基準法以外では、建築士法、高齢者等~法、耐震改修法、品確法、建設業法、都市計画法、消防法・・・など、2級では5/25問、1級では10/30問出題されます。一番出題頻度が高いのが建築士法、2級では2問、1級では4~5問出題されます。出題内容も士法全般から出ますので、大きく3つの分野に分けて覚えておくと法令集で確認もしやすいです。①免許(1章、2章) ②業務(4章~5章) ③事務所(6章以降)問題を読んだときにどの分野の問題かを見極めるようにしてください。今回は、建築基準法、建築士法の融合問題・罰則等を見てみましょう。今までやってきた建規法、士法の中にも出てきている問題もありますが、過去問を一肢ごとではなく問題ごとにまとめてみました。建基法、士法のまとめ問題としてやってみてください!

(問題文は、法改正等により一部訂正してるものもあります。)

​19-4建築基準法・建築士法

□ 建築基準法・建築士法融合問題 (1級)

1.木造の一戸建ての住宅に関する次の記述のうち、 建築基準法又は建築士法上、 誤っている も
のはどれか。ただし、構造計算は行っていないものとする。(1級H21)

1建築士の設計に係る延べ面積120㎡、 地上2階建ての住宅で、 建築確認の特例によ り 、
建築基準法令の規定の一部が審査から除外される場合であっても 、 当該規定は遵守され
なければならない。

2方づえ、 控柱及び控壁がない地上 2 階建ての住宅で、 構造耐カ上主要な部分である壁、
柱及び横架材を木造としたものにあっては、 すべての方向の水平力に対して安全である
ように、 各階の張り間方向及びけた行方向に、 それぞれ壁を設け又は筋かいを入れた軸
組を釣合い良く配置しなければならない。
3構造耐力上主要な部分である継手又は仕口は、 ボルト締、 かすがい打、 込み栓打その他
の所定の方法により 、 その部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならない。
4延べ面積120㎡、 地上 2 階建ての住宅を新築する場合、 建築主は、 建築士である工事監
理者を定めなくてもよい。

2.以下の条件に該当する建築物の設計に際して、建築基準法又は建築士法の規定の適用に関す
る建築士事務所の開設者又は設計者の判断として、次の記述のうち、建築基準法又は建築士
法に適合しないものはどれか。(1級R03)

【条件】

・規 模:地上 4 階建て(避難階は 1 階のみ)

・延べ面積:2,000㎡(各階の床面積は 500㎡ )

・用 途:1 階の一部 スーパーマーケット(床面積 400㎡)
1 階の一部及び2~4 階共同住宅

・立 地:第一種中高層住居専用地域 1 当該建築物の新築に係る設計受託契約を締結する際に、建築士の氏名、報酬の額及び支払
の時
期、契約の解除に関する事項などを記載した書面を、署名をして、建築主との間で相
互に交付
することとした。 2用途地域に基づく建築物の用途の制限に関し、良好な住居の環境を害するおそれがないも
のとして特定行政庁の許可を受けることとした。
32階から 4 階までの各階においては 1 階に通ずる直通階段を二つ設け、かつ、1 階のスー
パーマーケットにおける屋外への出口の幅の合計を300㎝とすることとした。
4共同住宅とスーパーマーケットとを耐火構造とした床及び壁で区画し、その開口部には特
定防火設備を設けることとした。

3.次の記述のうち、建築基準法又は建築士法上、誤っているものはどれか。(1級H27)

1確認済証の交付に当たっての審査において、建築主事による必要な事項についての質問に
対して、当該建築物の設計者である建築士が虚偽の答弁をした場合においては、当該建築
士は罰則の適用の対象となる。
2建築主により工事監理者が定められていないまま、一級建築士でなければ設計できない建
築物の工事をした場合においては、当該建築物の工事施工者は罰則の適用の対象となる。
3建築主は、設備設計一級建築士の関与が義務づけられた建築物の工事をする場合において
は、設備設計一級建築士である工事監理者を定めなければならない。
4構造設計一級建築士は、建築士事務所に属せず、教育に関する業務を行っている場合であ
っても、構造設計一級建築士定期講習を受けなければならない。
4. 次の記述のうち、建築基準法又は建築士法上、誤っているものはどれか。(1級H29) 1特定行政庁が特定工程の指定と併せて指定する特定工程後の工程に係る工事を、工事施工
者が当該特定工程に係る中間検査合格証の交付を受ける前に施工した場合、当該工事施工
者は罰則の適用の対象となる。
2一級建築士でなければ行ってはならない建築物の設計及び工事監理を二級建築士が行い、
工事が施工された場合、当該建築物の工事施工者は罰則の適用の対象とならないが、当該
二級建築士は罰則の適用の対象となる。
3患者の収容施設がある地上3階、床面積300㎡の診療所(国等の建築物を除く。)の所有者等
は、当該建築物の敷地、構造及び建築設備について、定期に、一定の資格を有する者にそ
の状況の調査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
4建築士事務所の開設者は、事業年度ごとに、設計等の業務に関する報告書を作成し、毎事
業年度経過後3月以内に当該建築士事務所に係る登録をした都道府県知事に提出するとと
もに、所定の業務に関する事項を記載した帳簿を備え付け、各事業年度の末日にその帳
簿を閉鎖し、その翌日から15年間保存しなければならない。
5. 次の記述のうち、建築基準法又は建築士法上、誤っているものはどれか。(1級R01) 1基準法の構造耐力の規定に違反する建築物の設計を建築主が故意に指示し、建築士がそ
れに従って設計及び工事監理をした場合、当該建築主及び建築士のいずれも罰則の適用
の対象となる。
2 建築士事務所の開設者である一級建築士が、当該建築士事務所の登録期間が満了したにも
かかわらず、更新の登録を受けずに他人の求めに応じ報酬を得て工事監理業務を業として
行った場合には、当該建築士は、業務停止等の懲戒処分の対象となる。
3建築士事務所に属する建築士の氏名及びその者の一級建築士、二級建築士又は木造建築士
の別に変更があった場合に、3月以内に、その旨を都道府県知事に届け出ないときは、当
該建築士事務所の開設者及び管理建築士のいずれも罰則の適用の対象となる。
4建築士事務所の開設者が、自己の名義をもって、他人に建築士事務所の業務を営ませたと
きは、当該建築士事務所の開設者は罰則の適用の対象となる。

6.以下の条件の建築物に関する次の記述のうち、建築基準法又は建築士法上、誤っているもの
はどれか。ただし、耐火性能検証法による確認は行われていないものとする。(1級R02)
【条件】

・立地:防火地域及び準防火地域以外の地域

・用途:物品販売業を営む店舗(各階に当該用途を有するもの)

・規模:地上4階建て(避難階は1階)、高さ15m、延べ面積2,000㎡

・構造:木造(主要構造部に木材を用いたもの)

・所有者等:民間事業者 1時刻歴応答解析により安全性の確認を行う場合を除き、許容応力度等計算、保有水平耐力
計算、限界耐カ計算又はこれらと同等以上に安全性を確かめることができるものとして国
土交通大臣が定める基準に従った構造計算のいずれかによって、自重、積載荷重、地震等
に対する安全性を有することを確かめなけれはならない。
2当該建築物の通常火災終了時間及び特定避難時聞が75分であった場合、その柱及びはりに
ついて、耐火構造とする場合を除き、通常の火災による75分間の火熱を受けている間は構
造耐力上支障のある損傷を生じないものとする性能を確保しなけれはならない。
3当該建築物を新築する場合において、構造設計一級建築士及び設備設計一級建築士以外の
一級建築士が設計を行ったときは、構造設計一級建築士に構造関係規定に適合するかどう
かの確認を求め、かつ、設備設計一級建築士に設備関係規定に適合するかどうかの確認を
求めなければならない。
4所有者等は、必要に応じて建築物の維持保全に関する準則又は計画を作成して常時適法な
状態に維持するための措置を講じ、かつ、定期に、一級建築士等にその状況の調査をさせ
て、その結果を特定行政庁に報告しなけれはならない。
7.次の記述のうち、建築基準法又は建築士法上、誤っているものはどれか。(1級H22) 1 構造設計一級建築士とは、原則として、一級建築士として5年以上構造設計の業務に従事し
た後、登録講習機関が行う所定の講習の課程を修了し、構造設計一級建築士証の交付を受
けた一級建築士をいう。
2構造設計一級建築士の関与が義務づけられた建築物の対象の範囲は、構造計算適合性判定
が必要となる建築物の対象の範囲と同一である。
3構造設計一級建築士の関与が義務づけられた建築物において、構造設計一級建築士が構造
設計を行い、その構造設計図書に構造設計一級建築士である旨の表示をした場合には、構
造計算によって建築物の安全性を確かめた旨の証明書を設計の委託者に交付する必要はな
い。
4設備設計一級建築士の関与が義務づけられた建築物において、当該建築物が設備関係規定
に適合することを確認した設備設計一級建築士は、当該建築物の設計者に含まれる。
8.次の記述のうち、建築基準法及び建築士法に適合しているものはどれか。(1級H23) 1準防火地域内における建築物の外壁の延焼のおそれのある部分に国土交通大臣による構造
方法等の認定を受けた防火設備を用いようとして、製造業者に発注したところ、用いられ
ている部材の形状が認定された仕様と異なっていたが、認定を受けた構造方法等の変更で
あったので、当該変更に係る認定を受けずにそのまま施工した。
2既に建築確認を受けた建築物の計画の変更をすることとなったが、階数を減少するもので
あり、変更後も建築物の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなものであった
ので、当該計画の変更に係る建築確認の申請を行わなかった。
3建築基準法第20条第1項第一号の基準に適合する建築物として国土交通大臣による構造方
法等の認定を受けた建築物の計画を変更することとなったが、認定を受けた構造方法等の
軽微な変更であったので、当該変更に係る認定を受けずに、完了検査申請時に軽微な変更
説明書を添付した。
4構造設計一級建築士に保有水平耐カ計算が必要な高さ60mの建築物の構造設計を依頼した
ところ、構造計算によって建築物の安全性を確かめた旨の証明書の交付を受けたので、構
造設計図書に構造設計一級建築士である旨の表示がされていなかったが、当該構設計図書
により建築確認の申請を行った。
9.次の記述のうち、建築基準法又は建築士法上、誤っているものはどれか。(1級H30) 1構造設計一級建築士は、建築士事務所に属さず、教育に関する業務を行っている場合であ
っても、構造設計一級建築士定期講習を受けなければならない。
2許容応力度等計算を要する建築物について、許容応力度等計算を行ったものであっても、
構造計算適合判定資格者である建築主事が、確認申請に係る建築物の計画が建築基準関係
規定に適合するかどうかを審査したものは、構造計算適合性判定を受けなくてもよい。
3特定行政庁が、建築物の所有者、管理者、設計者、工事監理者、工事施工者又は建築物に
関する調査をした者に対して、建築物の構造又は建築設備に関する調査の状況について報
告を求めたにもかかわらず、報告をしなかった当該所有者等は、罰則の適用の対象となる。
4建築主が工事監理者を定めないまま、一級建築士でなければ工事監理ができない建築物の
工事をさせた場合においては、当該建築主は、罰則の適用の対象となる。
□ 罰則規定 (1級)
1. 次の記述のうち、建築基準法又は建築士法上、誤っているものはどれか。(1級H21)
1建築士は、建築基準法、建築士法等の規定に違反する行為について、相談に応じてはならな
い。
2建築基準法の構造耐力の規定に違反する建築物の設計を建築主が故意に指示し、それに従っ
た設計が行われ、工事が施工された場合、当該建築主も罰則の適用の対象となる。
3法人である建築士事務所の業務として、その代表者又は従業員が、建築基準法の構造耐力
の規定に違反する特殊建築物等を設計し、工事が施工された場合、当該法人は、1億円以
下の罰金刑の適用の対象となる。
4 一級建築士でなければ行ってはならない建築物の設計及び工事監理を二級建築士が行い、
工事が施工された場合、当該二級建築士は罰則の適用の対象となり、当該建築物の工事施
工者は罰則の適用の対象とならない。

2.建築基準法又は建築士法における罰則の適用に関する次の記述のうち、誤っているものはど
れか。(1級H18)
1 一級建築士でなければ行ってはならない建築物の設計及び工事監理を二級建築士が行い、
工事が施工された場合、当該建築物の工事施工者には罰則は適用されないが、当該二級建
築士には罰則が適用される。
2建築基準法の構造関係規定に違反する建築物の設計を建築主が指示し、建築士がそれに従
って設計及び工事監理をした場合、当該建築主及び当該建築士には罰則が適用される。
3特定行政庁が特定工程の指定と併せて指定する特定工程後の工程に係る工事を、工事施工
者が中間検査合格証の交付を受ける前に施工した場合、当該工事施工者には罰則が適用さ
れる。
4確認済証の交付に当たっての審査において、建築主事による必要な事項についての質問に
対して、当該建築物の設計者である建築士が虚偽の答弁をした場合、当該建築士には罰則
が適用される。
5建築士が、建築士事務所の登録を受けないで、業として他人の求めに応じ報酬を得て、設
計等を行った場合、当該建築士には罰則が適用される。
3. 次の記述のうち、建築基準法又は建築士法上、誤っているものはどれか。(1級H26) 1一級建築士でなければ行ってはならない建築物の設計及び工事監理を二級建築士が行い、
工事が施工された場合、当該建築物の工事施工者は罰則の適用の対象とならないが、当
該二級建築士は罰則の適用の対象となる。
2建築基準法の構造耐力の規定に違反する建築物の設計を建築主が故意に指示し、建築士が
それに従って設計及び工事監理をした場合、当該建築主及び当該建築士のいずれも罰則の
適用の対象となる。
3特定行政庁が特定工程の指定と併せて指定する特定工程後の工程に係る工事を、工事施工
者が当該特定工程に係る中間検査合格証の交付を受ける前に施工した場合、当該工事施工
者は罰則の適用の対象となる。
4法人である建築士事務所の業務として、その代表者又は従業員が、建築基準法の構造耐力
の規定に違反する特殊建築物等を設計し、工事が施工された場合、当該法人は、1億円以
下の罰金刑の適用の対象となる。
□ 最高裁判例等 (1級)
1.民法に規定する不法行為に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例(平成19年7月6日判決)
において示された判断に照らして、最も不適当なものはどれか。(1級H20)
1建築物は、そこに居住する者だけでなく、建築物の利用者や隣人、通行人等の生命、身体
又は財産を危険にさらすことがないような安全性を備えていなければならない。
2建築物の設計者、施工者及び工事監理者は、建築物の建築に当たり、契約関係にない建築
物の利用者や隣人、通行人等に対しても、建築物としての基本的な安全性が欠けることが
ないように配慮すべき注意義務を負う。
3建築物の設計者、施工者及ひ工事監理者は、注意義務を怠ったことにより、建築物として
の基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、特段の事情がない限り、これによって生
じた損害について不法行為による賠償責任を負う。
4建築物の設計者、施工者及び工事監理者がその業務に関し、不法行為による賠償責任を負
うのは、居住者等の生命又は身体を危険にさらすような建築物の基礎や構造躯体に瑕疵が
ある場合に限られる。
5 不法行為責任が認められる以上、直接の建築請負契約を締結していない当該建築物の譲渡
を受けた者であっても、設計者、施工者及び工事監理者に対して損害賠償請求ができる。
2. 下記の事例は、最高裁判所の判例(平成15年11月14日判決)における建築士の設計及び工事
監理に関する損害賠償請求事件の概要の一部を示すものである。この事件の判決において示
された判断に該当しないものは、次のうちどれか。
事例
B社は、建売住宅を建築し、販売することを計画し、C社(代表者は一級建築士A )に対し、
本件建物(一級建築士又は二級建築士による設計及び工事監理が必要とされるもの)の建築確認
申請に用いるための設計図書の作成を依頼するとともに、建築確認申請手続の代行を委託した。
Aは、上記設計図書を作成し、建築確認申請を行い、その際、Aは、B社の要請に応じて、建築
確認申請書の工事監理者欄に一級建築士の肩書と自己の氏名を記載した。当時、C社とB社との
間には、工事監理契約が締結されておらず、将来、締結されるか否かも未定であった。Aは、B
社の従業員の中の有資格者が工事監理をするであろうと考え、B社に工事監理者の変更の届出
をさせる等の措置を何ら執ることなく、放置した。 B社は、建築主兼施工者として本件建物の
建築工事を行ったが、その際、建築確認を受けるために用いた設計図書を使用せす、これとは
異なる施工図面に基づき、しかも、実質上、工事監理者がいない状態で建築工事を実施した。
その結果、本件建物は、建築基準法が要求する構造耐力を有しないなど、重大な瑕疵のある建
築物となった。
本件は、本件建物の購入者が、c社に損害賠償を求めた事例である。(1級H18) 1 建築士は、その業務を行うに当たり、建築士法及び建築基準法の各規定による規制の実効
性を失わせるような行為をしてはならない法的義務がある。
2建築士は、故意又は過失により建築士法及び建築基準法の各規定の実効性を失わせるよう
な行為をした場合には、その行為により損害を被った建築物の購入者に対し、不法行為に
基づく損害賠償責任を負うものと解するのが相当である。
3Aは、建築確認申請書に工事監理を行う旨の実体に沿わない記載をしたのであるから、自己
が工事監理を行わないことが明確になった段階で、建築基準関係規定に違反した工事が行
われないようにするため、本件建物の建築工事が着手されるまでに、B社に工事監理者の
変更の届出をさせる等の適切な措置を執るべき法的義務がある。
4 本件工事監理に関するAの一連の行為は、法的義務に違反した違法行為と解するのが相当で
ある。
5C社とB社との間では本件建物の建築工事についての工事監理契約を締結していなかったの
で、本件建物に係る建築確認申請書にAを工事監理者とする旨の記載をしたからといって、
これによりC社が不法行為に基づく損害賠償責任を負うことはない。
3.民法に規定する不法行為に関するイ~ニの記述について、最高裁判所の判例(平成19年7月6
日判決及び平成23年7月21日判決)において示された判断に照らして、適当なものは、次の
うちどれか。(1級H24)
建築物の設計者、施工者及び工事監理者は、注意義務を怠ったことにより、建築物として
の基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、特段の事情がない限り、これによって生
じた損害について不法行為による賠償責任を負う。
建築物の設計者、施工者及び工事監理者がその業務に関し、不法行為による賠償責任を負
うのは、建築物の基礎や構造躯体に瑕疵がある場合に限らず、バルコニーの手すり等の瑕
疵も対象となる。
建築物の基本的な安全性を損なう瑕疵とは、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実
的な危険をもたらしている場合に限らず、 これを放置するといずれは危険が現実化するこ
ととなる場合も含まれる。
直接の建築請負契約を締結した者に限らず、その者から建築物の譲渡を受けた者であって
も、不法行為責任が認められる場合には、設計者、施工者及び工事監理者に対して、損害
賠償請求ができる。
1イとロとハのみ

2イとロとニのみ

3イとハとニのみ

4イとロとハとニ

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​解説

​19-3建築基準法・建築士法

今回は、各条文についての解説はしていません。該当条文を法令集で確認して下さい。

□ 建築基準法・建築士法融合問題 (1級)

1. 1法6条の4 1項三号により、法6条1項四号建築物で建築士の設計によるものは、建
築基準法の規定の一部(令10条三号)の確認が除かれるが、その内容は遵守しなけ
ればならない。 正しい

2令46条1項により、正しい。
3令47条1項により、正しい。 4×法5条の6 4項。士法3条の3 1項により、木造で100㎡超の新築は、建築士である
工事監理者を定めなければならない。 誤り
2. 1士法22条の3の3 1項により、300㎡を超える新築工事の設計受託契約には、各号
の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして交互に交付しなければならない。
正しい
2×法別表2(は)欄 五号により、2階500㎡以下の店舗、共同住宅は許可を受けなくて
も建てることができる。 誤り
3令121条1項五号により、居室が100㎡(200㎡)の判断はできないが2階段設けること
はOK。令125条3項により、出口の幅の規制があるが1,500㎡を超えていないので
300㎝としてもOK。 正しい
4令112条18項 法別表2より、共同住宅3階以上なので異種用途区画しなければなら
ない。 正しい
3.1 法99条1項七号により、法12条7項違反となり1年以下の懲役又は100万以下の罰金
に処せられる。 正しい
2法101条1項一号により、法5条の6 5項違反となり工事施工者は100万以下の罰金
に処せられる。 正しい
3×士法20条の3 1項により、階数3以上かつ5,000㎡超の設備設計の場合は、設備設
計一級建築士の関与が義務付けられているが、工事監理については義務付けられて
いない。 誤り
4士法22条の2四号により、一号二号( )書きにある事務所に属する者限定ではな
い。資格を持っているものは定期講習を受けなければならない。 正しい
4.1法99条1項二号二より、法7条の3 6項違反となり1年以下の懲役又は100万以下の
罰金に処せられる。 正しい
2×法101条1項一号により、法5条の6 1項違反となり工事施工者も罰則の対象となる。
誤り
3法12条1項二より、診療所は令16条1項三号に該当するので定期報告しなければなら
ない。 正しい
4士法23条の6、士法24条の4 1項、規21条3項により、正しい。
5.1 法98条1項二号 2項 法99条1項八号 2項により、法20条1項違反は建築主が故
意の場合は、建築主及び建築士いづれも罰則の対象となる。 正しい
2士法10条1項一号により、士法23条3項を違反したこととなり懲戒処分の対象とな
る。 正しい
3×士法41条九号により、士法23条の5 2項違反により罰則を受けるのは提出者(事務
所の開設者)のみ、管理建築士は罰則を受けない。ただし、事務所の開設者と管理
建築士が同一人物の場合は罰則を受ける。 誤り
4士法38条十一号により、士法24条の2違反により1年以下の懲役又は100万以下の罰
金に処せられる。 正しい

6.1法20条1項二号イにより、令81条2項二号イロにより正しい。

2法21条1項一号 令109条の5一号イ、法27条1項一号 令110条一号イにより、正
しい。
3×士法20条の3 1項 2項により、設備設計一級建築士が関与するのは階数3以上かつ
5,000㎡以上の建築物が対象。 設備設計一級建築士の確認は不要。 誤り
4法8条2項一号 令13条の3 1項一号により、準則又は計画の作成等をしなければ
ならない。 法12条1項 令16条1項三号により、定期報告しなければならない。
正しい
7.1士法10条の2の2 1項一号 4項( )書きにより、正しい。 2×法6条の3 1項により、適判は法20条1項二号 三号建物が対象。士法20条の2
1項により構造設計一級建築士の関与は、法20条1項一号 二号が対象。 対象
が違う。 誤り
3士法20条2項ただし書きにより、構造設計一級建築士が構造設計をし構造設計図書
にその旨を表示した場合は、証明書の交付は不要となる。 正しい
4法2条十七号により、士法20条の3 3項の設備設計一級建築士は設計者に含まれる。
正しい
8.1×法61条により認定を受けたものを使用することができるが、認定品に対して変更等
による軽微な変更措置等は規定(法68条の25)されていないので、仕様と異なる
防火設備を用いることはできない。 誤り
2法6条1項後段( )書きにより、規3条の2 1項四号に該当するので確認申請を出
しなおす必要はない。 正しい
3×法20条1項一号の認定に対する軽微な変更措置等は規定(法68条の25)されていな
いので、認定を受けなければならない。 誤り
4×士法20条の2 1項により、構造設計一級建築士が関与しなければならない建築物な
ので、構造設計図書には表示をしなければならない。 誤り
9.1士法22条の2四号により、一号二号( )書きにある事務所に属する者限定ではな
い。資格を持っているものは定期講習を受けなければならない。 正しい
2法6条の3 1項ただし書きにより、規3条の13 1項二号の「構造計算適合判定資格
者」が確認を行った場合は、適合性判定は受けなくてもよい。 正しい
3法99条1項五号により、法12条5項一号違反は、1年以下の懲役又は100万以下の罰
金に処せられる。 正しい
4 ×法101条1項一号により、法5条の6 5項違反となり工事施工者が罰則の対象となる。
建築主ではない。 誤り
□ 罰則規定 (1級)
1.1士法21条の3により、正しい。 2法98条1項二号 2項 法99条1項八号 2項により、法20条1項違反は建築主が故
意の場合は、建築主及び建築士いづれも罰則の対象となる。 正しい
3法105条一号により、法98条1項二号違反となり1億円以下の罰金刑に処せられる。
正しい
4 ×法101条1項一号により、法5条の6 5項違反となり工事施工者にも罰則が課せられ
る。 誤り
2.1×士法38条三号により、建築士は罰則が科せられる。法101条1項一号により、法5条
の6 5項違反となり工事施工者にも罰則が課せられる。 誤り
2法98条1項二号 2項 法99条1項八号 2項により、法20条1項違反は建築主が故
意の場合は、建築主及び建築士いづれも罰則の対象となる。 正しい
3法99条1項二号により、法7条の3 6項違反となり工事施工者に罰則が課せられる。
正しい
4 法99条1項七号により、法12条7項違反となり1年以下の懲役又は100万以下の罰金
に処せられる。 正しい
5士法38条九号により、士法23条の10 1項違反となり1年以下の懲役又は100万以
下の罰金に処せられる。 正しい
3.1×士法38条三号により士法3条1項違反となり建築士は罰則を受ける。法101条1項
一号により、法5条の6 5項違反となり工事施工者にも罰則が課せられる。 誤り
2法98条1項二号 2項 法99条1項八号 2項により、法20条1項違反は建築主が故
意の場合は、建築主及び建築士いづれも罰則の対象となる。 正しい
3法99条1項二号により、法7条の3 6項違反となり工事施工者に以年以下の懲役又は
100万以下の罰金が課せられる。 正しい
4法105条一号により、法98条1項二号違反となり1億円以下の罰金刑に処せられる。
正しい
□ 最高裁判例等(1級)
1. 1建築物の基礎や構造躯体の瑕疵に限らず、建築物としての基本的な安全性を損なう
  瑕疵がある場合は、不法行為が成立すると最高裁の判決は解している。4番は誤り

2
3
4 × 誤りは4番
52.1最高裁での判決 該当する。

2最高裁での判決 該当する。

3 最高裁での判決 該当する。

4最高裁での判決 該当する。

5×Aが代表であるC社は、本件建物の購入者に不法行為に基づく損害賠償責任を負うと
判断される。 該当しない
3.イとロは平成19年7月6日判決、ハとニは平成23年7月21日判決に該当する。 い

4番(イとロとハとニ)が正しい

今回は建築基準法と建築士法の融合問題、罰則等でした。 罰則の問題は、罰則を受けるかどうかだけなら判断しやすいですが、具体的な罰則の内容(罰金の金額等)を聞かれるとちょっと厄介です。過去問だけはしっかりマークして下さい。

次回からは、その他法令(バリアフリー法、耐震改修法・・・・等)以外に慣れないと手こずる問題です。特に1級では、ここがとれるか取れないかで合否にもかかわってきます!今日はこんな言葉です。

『懸命な努力、自分や仲間を信じる心、
そして絶対にやり遂げるという強い志という三つがあれば、
必ず天や運は味方をしてくれる。』 (村上和雄)

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