合格への鍵 ~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~ (本欄は、当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者(元国土交通省室長)が総合監修します。) 平成 4年 第 4 回 ―建築士事務所に関する重要な規定は何か?―第3回で、個人としての建築士が誠実に仕事をすることと、その建築士の属する建築士事務所がしっかりしていることによって社会の負託に答えることが建築士法の基本理念となっていると記しましたが、建築士法に関する試験問題でも 個人としての建築士の在り方についての問題と 建築士事務所の在り方についての問題とに大別されます。 【問題1】次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。 この問題は、平成26年一級建築士法規の建築士事務所に関するいくつかの重要事項を含む問題です。 設問2、3も設問の通りです。設問2において、建築士事務所の開設者は建築主との設計受託契約に先立って重要事項の説明をしなければなりませんが、重要事項の説明は管理建築士でなくても他の代理の建築士でも差し支えありません。但し、代理の建築士の説明内容についての責任は管理建築士が負わなければならないことになっている点にも注意する必要があります。 設問4において、重要事項の説明や契約を締結するときの書面の交付は、設計又は工事監理の業務の場合のみですので設問4は誤りで、他の業務の場合は必要ないことにも注意しておく必要があります。 以上のことからも、建築士事務所において、建築士の行う業務のうちで設計と工事監理は特に重要度の高い業務に位置づけられていると考えることができます。 【問題2】建築士事務所に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。 問題2は、平成29年度二級建築士法規の問題ですが、この問題には一級・二級建築士の建築士法の問題として最も程度の高いレベルの設問と近年の法改正に係わる留意すべき設問とを含んでいます。
設問1は、建築士の行うことのできる業務のうちで、建築士法第21条において、建築士が行うことのできる業務は、「設計及び工事監理のほか、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査又は鑑定及び建築物の建築に関する法令又は条例の規定に基づく手続の代理」と「その他の業務」と規定されており、また、建築士法第23条では、他人の求めに応じて報酬を得て第21条で規定されている建築士の行うことのできる業務の中で「その他の業務」を除く業務を業として行うときは、建築士事務所の登録をしなければならないと規定されています。
以上のように、この設問の内容は、単に建築士法上に記載されている事項に合っているか、否かということだけではなく、設計・工事監理や施工管理等の建築の全体構成の基本原則に係わる重要な内容の問題であると考えることができます。 また、設問2における重要事項の説明は、問題1の設問4と同一の内容で、設計・工事監理の場合に限られるため、設問2は誤りです。 設問3、設問4、設問5は正ですが、いずれも平成27年の法改正に係わる設問で、過去に出題されたことのない新規な内容のものです。 なお、設問5における「……の措置を講ずるよう努めなければならない。」は、「……しなければならない。」のような義務規定と異なる努力義務規定であることも留意しておく必要があります。 以上の問題1、問題2の内容からも、建築士法に係わる問題は、一級、二級の問題で内容・レベルの差はなく、建築全体を考える上で大切な内容を含むものが多い一方で、複雑な例外事項等を含む条文は少なく、比較的勉強し易いものであるともいえましょう。 第67回 建築士試験に独学で挑戦する方のために、過去問を使って問題の解き方・ポイント・解説などを行っています。去問約20年分を1肢ごとにばらして、出題の項目ごとに分けてまとめています。1,2級両方載せていますので、1級受験の方は2級問題で慣らしてから1級問題に挑戦。2級受験の方は、時々1級の過去問題からも出題されますので参考程度に1級問題を見ておくと得点UPが狙えます!!全科目終わるには先の長い話ですが、勉強の参考になると嬉しいです!
19-4建築基準法・建築士法 □ 建築基準法・建築士法融合問題 (1級) 1.木造の一戸建ての住宅に関する次の記述のうち、 建築基準法又は建築士法上、 誤っている も 1建築士の設計に係る延べ面積120㎡、 地上2階建ての住宅で、 建築確認の特例によ り 、 2方づえ、 控柱及び控壁がない地上 2 階建ての住宅で、 構造耐カ上主要な部分である壁、 2.以下の条件に該当する建築物の設計に際して、建築基準法又は建築士法の規定の適用に関す ・規 模:地上 4 階建て(避難階は 1 階のみ) ・延べ面積:2,000㎡(各階の床面積は 500㎡ ) ・用 途:1 階の一部 スーパーマーケット(床面積 400㎡) ・立 地:第一種中高層住居専用地域 1 当該建築物の新築に係る設計受託契約を締結する際に、建築士の氏名、報酬の額及び支払 1確認済証の交付に当たっての審査において、建築主事による必要な事項についての質問に ・立地:防火地域及び準防火地域以外の地域 ・用途:物品販売業を営む店舗(各階に当該用途を有するもの) ・規模:地上4階建て(避難階は1階)、高さ15m、延べ面積2,000㎡ ・構造:木造(主要構造部に木材を用いたもの) ・所有者等:民間事業者 1時刻歴応答解析により安全性の確認を行う場合を除き、許容応力度等計算、保有水平耐力 2イとロとニのみ 3イとハとニのみ 4イとロとハとニ ***************************************************************** 解説 19-3建築基準法・建築士法 今回は、各条文についての解説はしていません。該当条文を法令集で確認して下さい。 □ 建築基準法・建築士法融合問題 (1級) 1. 1〇法6条の4 1項三号により、法6条1項四号建築物で建築士の設計によるものは、建 6.1〇法20条1項二号イにより、令81条2項二号イロにより正しい。 2〇法21条1項一号 令109条の5一号イ、法27条1項一号 令110条一号イにより、正しい。 3×士法20条の3 1項 2項により、設備設計一級建築士が関与するのは階数3以上かつ 5,000㎡以上の建築物が対象。 設備設計一級建築士の確認は不要。 誤り 4〇法8条2項一号 令13条の3 1項一号により、準則又は計画の作成等をしなければ ならない。 法12条1項 令16条1項三号により、定期報告しなければならない。 正しい7.1〇士法10条の2の2 1項一号 4項( )書きにより、正しい。 2×法6条の3 1項により、適判は法20条1項二号 三号建物が対象。士法20条の2 1項により構造設計一級建築士の関与は、法20条1項一号 二号が対象。 対象 が違う。 誤り 3〇士法20条2項ただし書きにより、構造設計一級建築士が構造設計をし構造設計図書 にその旨を表示した場合は、証明書の交付は不要となる。 正しい 4〇法2条十七号により、士法20条の3 3項の設備設計一級建築士は設計者に含まれる。 正しい8.1×法61条により認定を受けたものを使用することができるが、認定品に対して変更等 による軽微な変更措置等は規定(法68条の25)されていないので、仕様と異なる 防火設備を用いることはできない。 誤り 2〇法6条1項後段( )書きにより、規3条の2 1項四号に該当するので確認申請を出 しなおす必要はない。 正しい 3×法20条1項一号の認定に対する軽微な変更措置等は規定(法68条の25)されていな いので、認定を受けなければならない。 誤り 4×士法20条の2 1項により、構造設計一級建築士が関与しなければならない建築物な ので、構造設計図書には表示をしなければならない。 誤り9.1〇士法22条の2四号により、一号二号( )書きにある事務所に属する者限定ではな い。資格を持っているものは定期講習を受けなければならない。 正しい 2〇法6条の3 1項ただし書きにより、規3条の13 1項二号の「構造計算適合判定資格 者」が確認を行った場合は、適合性判定は受けなくてもよい。 正しい 3〇法99条1項五号により、法12条5項一号違反は、1年以下の懲役又は100万以下の罰 金に処せられる。 正しい 4 ×法101条1項一号により、法5条の6 5項違反となり工事施工者が罰則の対象となる。 建築主ではない。 誤り□ 罰則規定 (1級) 1.1〇士法21条の3により、正しい。 2〇法98条1項二号 2項 法99条1項八号 2項により、法20条1項違反は建築主が故 意の場合は、建築主及び建築士いづれも罰則の対象となる。 正しい 3〇法105条一号により、法98条1項二号違反となり1億円以下の罰金刑に処せられる。 正しい 4 ×法101条1項一号により、法5条の6 5項違反となり工事施工者にも罰則が課せられ る。 誤り2.1×士法38条三号により、建築士は罰則が科せられる。法101条1項一号により、法5条 の6 5項違反となり工事施工者にも罰則が課せられる。 誤り 2〇法98条1項二号 2項 法99条1項八号 2項により、法20条1項違反は建築主が故 意の場合は、建築主及び建築士いづれも罰則の対象となる。 正しい 3〇法99条1項二号により、法7条の3 6項違反となり工事施工者に罰則が課せられる。 正しい 4 〇法99条1項七号により、法12条7項違反となり1年以下の懲役又は100万以下の罰金 に処せられる。 正しい 5〇士法38条九号により、士法23条の10 1項違反となり1年以下の懲役又は100万以 下の罰金に処せられる。 正しい3.1×士法38条三号により士法3条1項違反となり建築士は罰則を受ける。法101条1項 一号により、法5条の6 5項違反となり工事施工者にも罰則が課せられる。 誤り 2〇法98条1項二号 2項 法99条1項八号 2項により、法20条1項違反は建築主が故 意の場合は、建築主及び建築士いづれも罰則の対象となる。 正しい 3〇法99条1項二号により、法7条の3 6項違反となり工事施工者に以年以下の懲役又は 100万以下の罰金が課せられる。 正しい 4〇法105条一号により、法98条1項二号違反となり1億円以下の罰金刑に処せられる。 正しい□ 最高裁判例等(1級) 1. 1〇建築物の基礎や構造躯体の瑕疵に限らず、建築物としての基本的な安全性を損なう 瑕疵がある場合は、不法行為が成立すると最高裁の判決は解している。4番は誤り 2〇
2〇最高裁での判決 該当する。 3〇 最高裁での判決 該当する。 4〇最高裁での判決 該当する。 5×Aが代表であるC社は、本件建物の購入者に不法行為に基づく損害賠償責任を負うと ロ〇 ハ
〇4番(イとロとハとニ)が正しい 今回は建築基準法と建築士法の融合問題、罰則等でした。 罰則の問題は、罰則を受けるかどうかだけなら判断しやすいですが、具体的な罰則の内容(罰金の金額等)を聞かれるとちょっと厄介です。過去問だけはしっかりマークして下さい。 次回からは、その他法令(バリアフリー法、耐震改修法・・・・等)以外に慣れないと手こずる問題です。特に1級では、ここがとれるか取れないかで合否にもかかわってきます!今日はこんな言葉です。 『懸命な努力、自分や仲間を信じる心、 |