トレンチカット工法
このページでは、土木・建設現場で採用されることのあるトレンチカット工法について説明しています。トレンチカット工法の特徴やこの工法が採用されやすいいくつかの施工場面、そのほかの掘削工法、そして使用される掘削機械など、おさえておくべき知識をまとめました。
トレンチカット工法とは
掘削工事をおこなう場所の外周部分を、溝状になるように掘削しておき、そこに、地下構造物などから順に構築していく施工方法のことを、トレンチカット工法と呼びます。ちなみに、外周部分につくる溝は、幅よりも深さのほうが大きくなるようにします。
トレンチカット工法の施工場面
トレンチカット工法は、おもに次に挙げるような3つの施工場面で採用されやすい工法です。
【1】掘削面積が広いところ
山留および埋め戻しの簡素化ができるので、掘削面積が広い現場の工事で採用されやすい工法だといえます。施工面積が広いと、山留壁の施工の際は、埋め戻し作業の負担もその分重くなってしまいます。その負担を軽減することができるという特徴が、広い工事現場でトレンチカット工法が選ばれる理由です。
【2】地下構造物
地下構造物の施工に向いている工法だといえます。先行の躯体を活かして、地下構造物の施工を進めることが可能です。
【3】土層があまり良くない地山
土層が良好とはいえない地山だとヒービング、あるいはボイリングによって、掘削底面が崩壊してしまう可能性が高くなります。ですから、山留工事はできないだろうと判断された場合などは、このトレンチカット工法が施工方法の選択肢のひとつとして検討されます。
トレンチカット工法以外の掘削工法
基礎工事の掘削工法は、トレンチカット工法以外にもさまざまな工法があります。おもな掘削基礎工事の工法としては、次のようなものが挙げられます。それぞれの特徴を簡単にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
ダウンヒルカット工法の特徴
傾斜面の下り勾配をそのまま利用し、ブルドーザーやスクレーパーを使って下りながら工事を続けることができる工法です。下りながら土を下に押し出していきます。「傾斜面掘削工法」という名称で呼ばれる場合もあります。
のり切りオープンカット工法の特徴
斜面を残しながら掘削していく工法です。山留作業は必要ありません。根切り作業だけで完了する工法であるため、安いコストで工事をしたいときいにも適しています。おさえておくべき注意点として挙げられるのは、45度の法面角度をキープするために、一定以上の根切りの深さが必要だということです。浅いと、根切りをおこなう範囲が広くなってしまいます。
アイランド工法の特徴
建築工事が完了したあとに、中央部の躯体を、まわりの地盤を掘削することによって残りの躯体を建設していく工法です。根切り底が浅いので、掘削する範囲が広い現場に向いているといえます。先行躯体に切梁がないので、効率よく作業を進めやすくなることがメリットとして挙げられます。
ベンチカット工法の特徴
斜面を階段状に掘削する工法です。ショベル系の機器で掘削をします。ダンプトラックへの積み込みをおこなう際には、ローダを使用します。
トレンチ工法の特徴
削り取った地盤(切土)にトレンチを掘削していく工法です。トレンチカット工法と名称が似ていますが、トレンチ工法では土留はしないところが相違点となります。
トレンチカット工法で使う掘削機械
トレンチカット工法で使用される掘削機械のうち、代表的なものとして「クラムシェルバケット」「バックホウ」「テレスコ式クラムシェル」の3つが挙げられます。
クラムシェルバケット
貝殻のように、あるいはUFOキャッチャーのように、先端を開閉して土をつかむ方法で排土作業をおこなうためのアタッチメントです。掘削作業にも使われますが、掘削力よりも揚程力のほうがより優れている機器だとといえます。
バックホウ
アタッチメントのショベルを、バックホウの運転席の方へ引き寄せるようにして使用する掘削機械です。掘削作業だけでなく、ダンプトラックへの積み込み作業にも対応しています。
テレスコ式クラムシェル
正式名称は「テレスコピック式クラムシェル」です。油圧シリンダー式とロープ併用式の2タイプがあります。前者は浅い部分の掘削を、そして後者は深い部分を掘削するのにそれぞれ適しています。
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土木工事の種類のひとつに山留め工事というものがあります。
建造物を建設する際に事故を未然に防ぐ目的で行われる安全面を考慮する上でなくてはならない工事です。
今回は山留め工事について解説します。
8つの工法とその使い分けについて解説した内容となっています。
この記事の内容
- 1 山留め工事とは
- 2 山留め工事を行う目的
- 3 山留め工事の種類
- 4 どの工法を選択するかの条件
- 5 山留め工事はどのような会社が行うか
- 6 まとめ
山留め工事とは
山留め工事とは建設工事において必要となる地盤掘削時の崩落、近隣の地盤沈下などを防止する目的で行う工事です。
具体的には掘削した穴の側面に山留め壁と呼ばれる物理的な壁を用います。
山留め壁は地盤の状況や地質により様々な工法で設置されます。
例えば親杭横矢板、ソイルセメント柱列壁、シートパイルなどと呼ばれる工法がありますが、それぞれ仕組みや使う資材も変わります。
山留め工事を行う目的
山留め工事を行う目的は、掘削工事の際に懸念される掘削した側面の崩落や周囲の地盤を崩落させないためです。
山留め工事を行わず掘削工事を行った場合、小さな掘削穴であれば掘削した側面が崩れてきても作業効率が少し落ちる程度ですが、深い穴の場合、崩落した際の土砂は相当な量となります。
人間は膝下までであれば自力で出られますが膝上まで埋まってしまうと自力脱出は途端に不可となってしまいます。
そのまま2回目の崩落が起こり、最終的に死亡災害に繋がるなどの災害例も多くあります。
条件によりますが、原則として掘削深さが1.5m以上になる計画には山留め工事が必要とされています。
よって安全計画を目的として山留め工事が行われるのです。
山留め工事の種類
山留め工事の種類や工法について解説します。
1.親杭横矢板工法
親杭横矢板工法は、比較的小規模な山留めに採用される山留め工事の工法の1つです。
H鋼を親杭として100cm程のスパンで打設し、その後掘削を進めながら親杭同士の間に木製の矢板を隙間なくはめ込んでいき、山留め壁とする工法です。
特徴として比較的安価なコストで施工することが出来ます。
しかし、矢板1枚1枚を繋げるこの工法は山留め壁自体に連続性がなく、止水性がないため地下水などがある地盤では不向きな工法と言えます。
2.シートパイル工法
シートパイル工法は鋼矢板工法とも呼ばれ、凹凸がある幅400mm程の鋼材を掘削範囲に順次打ち込み、それらを緊結させてそのまま山留め壁とする工法です。
親杭矢板工法と違って、鋼矢板同士を緊結させるため、ある程度の止水性が期待できます。
護岸工事や防波堤工事の際にも採用されやすい工法ですが、あまりにも土圧が高い条件の場合、鋼矢板自体が耐えきれず変形することもあるため注意が必要です。
また施工には高い技術力が必要とされるため、施工技量による差が出やすいというデメリットもあります。
3.ソイルセメント柱列壁工法
ソイルセメント柱列壁工法は、掘削する箇所の土を主原料としてセメントと混ぜ合わせとものを山留め壁とする工法です。
パイルドライバと呼ばれる大型の杭打機や専用の大型重機により深く掘削を行い、そのままセメント剤を注入・撹拌をしセメントの壁を作り、連なるようにラップさせることにより連続した山留め壁となります。
高い止水性が特徴で砂層で且つ湧水がある地盤での山留め工事を行う場合などに用いられます。
また、掘削と山留め壁造成が一工程で完了するため工期の短縮を図れることもメリットです。
大深度の施工も可能であり、50m以上の山留め壁造成の実績もあります。
その場合は高い土圧に耐えられるよう、芯材としてH鋼を挿入します。
一方デメリットとしては、施工費が高いことと施工に大型重機を用いるため広い箇所での施工に限定されることが挙げられます。
4.場所打ち鉄筋コンクリート山留め工法
場所打ち鉄筋コンクリート山留め工法は、山留め壁の範囲に穴を開け、その中に鋼材などを立て込んでいき、場所打ちでコンクリートを流し込み山留め壁とする工法です。
止水性が高く強度もあり、近隣の地盤沈下の恐れもほぼないことが特徴です。
また、山留め壁自体をそのまま建物の一部とすることが出来るので、そのような計画の際には採用されることが多くあります。
デメリットとしては、コンクリートを場所打ちとするため、養生期間が必要となり、他の山留め工法と比べ工期が掛かることが挙げられます。
5.水平切梁工法(山留め支保工)
水平切梁工法は山留め壁の種類ではなく、山留め支保工のひとつです。
山留め支保工とは、山留め壁だけでは支えきれない土圧や水圧などに対し、突っ張り棒のようなイメージで支える部材のことを言います。
水平切梁工法は切梁、腹起し、火打材によって構成されており、山留め支保工の中では最も採用率が高い工法です。
地盤条件や掘削深さ、敷地面積にあまり左右されない施工性がその理由です。
6.アンカー式山留め工法(山留め支保工)
アンカー式山留め工法は山留め支保工の一種で、山留め壁内部にアンカー孔を開け、そこに定着体と呼ばれるセメントやモルタルなどを注入し地盤に固定し、定着体と引張材を緊結させ内部から崩落を防ぐ工法です。
切梁などを組む必要がないため山留め壁内の空間を広く使えるメリットがあります。
しかし設置するには強固な地盤が必要となるなど条件がいくつかあります。
7.控え杭タイロッド式山留め工法(山留め支保工)
控え杭タイロッド式山留め工法は、控え杭と山留め壁をタイロッドと呼ばれる棒状の構造体で繋ぎ山留め壁を支持する工法です。
浅い掘削の際に採用され、山留め支保工が必要とされる場合に最初に検討されることが多いです。
切梁がないため施工性が上がり、アンカー式山留め工法と比較すると経済的です。
しかし、控え杭とタイロッドを設置するための広い敷地が必要となってしまいます。
8.オープンカット工法
オープンカット工法は山留め壁を設置せず地盤の安定勾配を利用し、直角ではない角度をつけて斜面上にし、掘削時の崩落を防ぐ工法です。
掘削部分の周囲が広い敷地であり、浅い掘削で且つ地下水の少ない地盤ということが条件となってしまいますが、費用面、工期面で大きなメリットがあります。
どの工法を選択するかの条件
8つの山留め工法について解説してきました。
ここまで紹介した工法の他にもまだいくつかあり、山留め工事には多くの種類があります。
ではどのようなことを考慮して、これらの工法を選択していけばよいのでしょうか。
ここではどの工法を選択するかの条件について解説します。
地質条件
山留め工事は地盤に対して行う工事のため地質の条件はとても重要です。
地質は場所によって全く異なります。
粘土質地盤、砂層地盤、岩盤など、また地下水の有無によっても適した工法は変わります。
例えば、地下水のある条件では親杭横矢板工法は適してはいませんので、その他の工法を選択することとなります。
環境条件
山留め工事を行う現場の環境を事前に確認することもとても大事な工程となります。
「近隣の建物とはどの程度離れているのか、掘削箇所の周囲はどの程度の敷地をとれるのか、工期内で終わらせられる工法が選択出来るのか、埋設物はあるのか」など環境によっても工法は様々となります。
例えば近隣の建物があまりにも近い場合、山留め工事中にその建物の地盤を沈下させるわけにはいきませんので、そこを考慮した工法を選択します。
期間
工法によって工期も様々です。
地質や環境条件に最も適した工法であっても、工期に間に合わなければ意味がありません。
また著しく工期のない現場などもあり、例えば「場所打ち鉄筋コンクリート工法を採用したいがコンクリートの養生期間がネックとなり工期を考慮した結果ソイルセメント工法へ変更する」などの検討が必要です。
騒音
環境条件を調べる際には騒音が出せる環境なのかも調べておく必要があります。
工法の中には重機を使用し地面を掘り起こしたり、杭を打ち込んだりすることが必要なものもあります。
例えば現場が住宅街の1画での施工となれば騒音を出すわけにはいきません。
その場合はなるべく騒音が出ない工法を選択していくこととなります。
また工事前の近隣への説明を行い理解を得ることでこういった問題を回避することも出来ます。
山留め工事はどのような会社が行うか
山留め工事は普段どのような業者が行っているのでしょうか。
山留め工事の建設工事の種類はとび・土工・コンクリート工事に分類され、必要な建設業許可は「とび・土工工事業」となります。
山留めには杭打ちやコンクリートの打設なども含まれるので、基本的には基礎工事や土工工事、土木工事の会社が行います。
山留め専門の工事会社というものはあまり多くありません。
まとめ
今回は山留め工事について解説しました。
山留め工事の専門業者はそこまで多くありませんが、一歩間違えれば大惨事を招く事態にもなりかねないとても重要な工事です。
現場条件に合った適切な工法を選択する必要があり、中には高度な技術が必要な工法もあります。
現地の確認、施工者の技術力の有無の確認など事前の段取りをしっかりと行うことが重要です。
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